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商標登録されている言葉を使っても大丈夫?

商標登録された言葉は、商標権者以外が勝手に使ってはダメなのでしょうか?

普通に使用していた言葉が実は商標登録されている言葉だったという場合もあり、疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、本記事では、商標登録の効力や登録された商標の使用可否について事例を交えて解説いたします。

1.登録された商標について

(1)商標権の効力

商標権者は、権利を侵害する者に対して、侵害行為の差し止めや、損害賠償等を請求することができます。

なお、商標権の効力が及ぶ範囲については後述します。

また、商標権や商標権侵害について詳しくは、こちらの記事をご参照ください。

▶商標権とは
▶商標権の侵害といわれたら?
▶登録した商標を第三者に使用された場合に取りうる方法

(2)商標が登録されているかはどこで確認できるか

検討中のネーミングが商標登録されているか否かは、商標を検索するための専用のサービスを利用する必要があります。

無料で商標の検索ができるサイトとしては、例えば、下記①②などが挙げられます。

①Cotobox (検索無料)

■検索~商標出願手続きまでシームレスに行えるサイト
トップページからいきなり商標検索が可能。
そのままサイト上で注文、出願、外部の専門家とのやりとりなど、商標登録全般のサービスが完結するプラットフォームとなっています。

<URL:https://cotobox.com/> 

②特許情報プラットフォーム J-PlatPat(検索無料)

■経産省所轄のデータベース
経済産業省所管の「独立行政法人 工業所有権情報・研修館」による産業財産権関連の工業所有権公報等を無料で検索・照会可能なデータベース。

<URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/> 

上記の利用方法について詳しくは『商標検索の方法-cotoboxとJ-Platpat』を、
その他の商標検索サービスは『商標の検索方法 ~おすすめサイト9選』をご参照ください。

2.商標権の効力の及ぶ範囲・及ばない範囲

(1)商標権の効力が及ぶ範囲

同一・類似

商標権は、商標登録の内容と同一の範囲(登録商標と同一の商標を、指定した商品やサービスと同一のものに対して使用する範囲)のみならず、類似の範囲にまで効力が及びます。

類似の範囲は、以下の3つがあります。

  1. 登録商標と同一の商標を、指定した商品やサービスと類似のものに対して使用する範囲
  2. 登録商標と類似の商標を、指定した商品やサービスと同一のものに対して使用する範囲
  3. 登録商標と類似の商標を、指定した商品やサービスと類似のものに対して使用する範囲

商標登録の内容と同一の範囲における商標権の効力としては、商標を独占的に使用することができる効力(商標法第25条)と、他人による商標の使用を排除することができる効力(商標法第37条)とがあります。

類似の範囲における商標権の効力としては、他人による商標の使用を排除することができる効力があります。したがって、商標権者は、権利を侵害する者に対して、侵害行為の差し止めや、損害賠償等を請求することができます。

ただし、類似の範囲においては、商標を独占的に使用することができる効力があるわけではなく、商標権者は、事実上、使用できているに過ぎません。言い換えれば、類似の範囲は、他人の登録商標の類似の範囲と重複する可能性があり、いわゆる蹴り合いと呼ばれる状態が生じ得ます。このため、重複する類似範囲では両者とも商標の使用ができないことになります。

したがって、商標出願をする際には、実際の商標の使用の仕方と商標登録の内容とが整合しているか、しっかり確認しておく必要があります。

有効な期間と地域

商標権の存続期間は、設定登録日から10年で終了します。商標権を維持したい場合は更新手続きが必要です。10年ごとの更新登録を繰り返すことで、商標権利の半永久的な存続が可能となります。

登録料を5年ごとの分割納付にしている場合、最初の5年分しか納付せず、後の5年分を納付しないと権利は5年で消滅します。

また、日本での商標登録による商標権の効力は日本国内に限られます。
外国で商標権を主張したい場合には、各国ごとに商標権を取得する必要があります。

(2)商標権の効力が及ばない範囲

商標権の効力が問題となるのは、商標登録されている文字などを他人が商標権者に無断で商標として使用した場合です。

商標としての使用とは、例えば、その文字を商品に付して販売するなど、その文字などを商品やサービスの出所表示として使用する行為が該当します。(商標法2条3項)

したがって、登録商標と同じ文字であっても、そもそも商標として使用しなければ、商標権の効力は及ばないことになります。

また、商標として使用した場合でも、上述した商標登録の内容と同一又は類似の範囲以外、すなわち、商標や商品・サービスが非類似の範囲については、商標権の効力は及びません。

さらに、下記(1)(2)のような場合にも、商標として使用していないと認められる場合には、商標権の効力は及びません。(商標法第26条)

(1)自己の氏名・名称等を普通に用いられる方法で表示する場合
例えば、自社の会社名が他人に商標登録されていた場合、自社の名称を普通に会社名として表示するだけであれば、商標権の効力は及びません。

(2)商品又は役務の普通名称、品質等を普通に用いられる方法で表示する場合
例えば、商品やサービスの普通名称や品質を表す文字などが他人に商標登録されていた場合、その普通名称や品質を表すものとして使用するだけであれば、商標権の効力は及びません。

ただし、上記(1)(2)のような場合であっても、商標権の効力が及ばないのは、あくまで普通に表示する範囲に限られ、例えば、ウェブサイト上で著しく目立つような態様で表示した場合には、商標として使用していると判断され、効力が及ぶ可能性もありますので注意が必要です。

3.使ってよい例・悪い例

(1)「ゆるキャラ」の商標登録

それでは、「ゆるキャラ」という登録商標を例に、使ってよい例・悪い例を考えてみたいと思います。※

「ゆるキャラ」は、今では一般用語化しつつある言葉のようにも思われますが、ゆるいマスコットキャラクターという意味を表す言葉として、みうらじゅん氏によって考案されたものであり、複数の商品・役務の区分で商標登録されています。

 例えば、「ゆるキャラ」の文字は、「インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル」という商品について、「有限会社みうらじゅん事務所」によって商標登録されています。ここで、「インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル」という商品にはスタンプ画像が含まれると考えられます。

この場合、「うさぎのゆるキャラスタンプです。」という情報をSNSで発信してもよいのでしょうか?

(2)使ってよい可能性の高い例

例えば、「うさぎのゆるキャラスタンプ」をもっぱら自分だけが使用するためだけに個人的な趣味で制作したような場合に、その出来栄えを自慢したくてスタンプ画像をSNS上にアップして、「うさぎのゆるキャラスタンプです。」という情報発信をしたとします。

このように、スタンプ画像を商品として販売するなどしておらず、また、その予定も全くないという状況であれば、「ゆるキャラ」という文字を商品の名称や出所表示のようなブランドとして使用しているわけではないと考えられます。

そのため、このような場合は、単に、ゆるいマスコットキャラクターという意味を表すための言葉として使用しているにすぎませんので、商標権の効力が及ぶ可能性は低いと考えられます。よって、このようなケースであれば、「ゆるキャラ」という文字を使用しても差し支えないと考えられます。

(3)使わない方がよい例

それでは、例えば、「ゆるキャラシリーズ」という商品シリーズの名称で、商標権者に無断でスタンプ画像を販売している場合はどうでしょうか?

上述のとおり、「ゆるキャラ」は、スタンプ画像を含む商品について商標登録されています。このため、そもそも、スタンプ画像の商品シリーズの名称としてブランド的に「ゆるキャラ」シリーズというような表示をして販売等すると、「ゆるキャラ」という文字を商標として使用していることに該当する可能性があり、商標権の効力が及ぶ可能性があると考えられます。

そして、そのような商品の宣伝広告のために、SNS上で、「うさぎのゆるキャラスタンプです。」という情報を発信した場合には、やはり「ゆるキャラ」という文字を商標として使用していることに該当する可能性があり、商標権の効力が及ぶ可能性があると考えられます。したがって、このようなケースであれば、「ゆるキャラ」という文字を商標権者に無断で使用するのは控えたほうがよいかもしれません。

(4)他の商品の例

「ゆるキャラ」という文字をTシャツに表示してもよいのでしょうか?

「ゆるキャラ」の文字は、洋服等の商品にも「有限会社みうらじゅん事務所」によって商標登録されています。

この例においても、先ほどのスタンプ画像と同様、例えば、「ゆるキャラ」という文字を表示したTシャツをもっぱら個人的に着用するためだけに趣味で制作したような場合には、「ゆるキャラ」という文字を商品の名称や出所表示のようなブランドとして使用しているわけではないと考えられます。したがって、この場合には、商標権の効力が及ぶ可能性は低いと考えられますので、「ゆるキャラ」という文字をTシャツに表示して着用しても差し支えない可能性が高いと考えられます。

一方で、例えば、「ゆるキャラ」という文字を表示したTシャツを製造、販売するような場合には、「ゆるキャラ」という文字を商標として使用していることに該当する可能性があり、商標権の効力が及ぶ可能性があると考えられますので、このような形で「ゆるキャラ」という文字を商標権者に無断で使用するのは控えたほうがよいかもしれません。

※「ゆるキャラ」の商標登録については、無関係な第三者に商標を取られ「ゆるキャラ」という言葉が自由に使えなくなることを防ぐ目的でなされたようであり、実際には、むやみに権利行使される可能性は低いのかもしれませんが、ここでは商標登録されている意外な言葉の分かり易い一例として挙げました。

4.まとめ

ある言葉を商品やサービスのブランド名として使用するとき、その言葉を商標として使用することになります。その言葉が他人によって先に商標登録されていると、商標権を侵害してしまうことになる可能性もありますので、事前にしっかり商標調査を行うのがよいでしょう。

また、他人によって商標登録されていない場合でも、商標登録は早いもの勝ちですので、他人に先に商標登録されてしまう前に、ご自身が出願人となって商標出願し、商標権の確保を目指されるのがよいでしょう。

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    執筆者
    弁理士 五味 和泰
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