商標登録は、自社の商品やサービスを守るために重要な手続きですが、商標登録にかかる費用計算は複雑です。また自分で登録手続きを進めるか、特許事務所に依頼するかでも費用は異なるため、事前にしっかりと理解することが大切です。
本記事では、商標登録の流れごとの費用と、自己申請と特許事務所に依頼した場合それぞれの費用に関して詳しく解説致します。
◇目次
【商標登録にかかる費用】
商標登録にかかる費用は、その支払い先によって2種類に分けることができます。
1つ目は、「特許庁に支払う費用(印紙代)」です。特許事務所に依頼しなくても、必要となる費用です。2つ目は、「特許事務所に支払う費用(弁理士手数料)」です。依頼先によって異なります。
まずは、特許庁に支払う費用(印紙代)を中心に本章で解説し、特許事務所に支払う費用(弁理士手数料)については後の章(【商標登録の依頼先別の費用】)で解説します。
1, 出願にかかる費用
特許庁に支払う費用は以下の通りです。区分数に応じて金額が変わります。
■ 特許庁に支払う費用 3,400円+(8,600円×区分数)(非課税)
■ 電子化手数料 2,400円+{ 800円 ×願書のページ数 }(非課税)
※インターネットから出願した場合は電子化手数料は不要
審査の結果登録が認められなくても、出願費用は返金されない点に注意が必要です。
出願時に特許庁に支払う費用(印紙代)を区分数ごとに算出すると以下のようになります。
区分数 | 出願時印紙代 |
---|---|
1 | ¥12,000 |
2 | ¥20,600 |
3 | ¥29,200 |
4 | ¥37,800 |
5 | ¥46,400 |
2, 中間応答にかかる費用
特許庁が審査をした結果、出願内容に問題があると判断することがあります(「他の登録商標と似ている」等)。そのような場合、問題点を記載した「拒絶理由通知書」が通知されます。
これに対して出願人は、「意見書」で反論をしたり、適切な内容に修正する「補正書」を提出し、拒絶理由の解消を試みることができます。この手続きを「中間応答」と呼んでいます。
中間応答に必要な費用は、以下のとおりです。
①意見書:特許事務所に支払う手数料 ※特許庁へ支払う費用は無し
②補正書:特許事務所に支払う手数料 ※特許庁へ支払う費用は無し(補正により区分数が増えた場合は、増えた区分分の出願費用が必要)
3, 登録にかかる費用
晴れて登録が認められた場合、登録料を特許庁に納付することで正式に登録となります。
費用は、納付方法により異なり、5年分ずつ前期・後期に分けて納める「分割納付」と、10年分をまとめて納付する「一括納付」の2種類から選択できます。
■ 特許庁に支払う登録料(5年分) 17,200円×区分数(非課税)
■ 特許庁に支払う登録料(10年分) 32,900円×区分数(非課税)
また、登録査定を受け取った日から30日以内に納付する必要があります。
登録時に特許庁に支払う費用(印紙代)を区分数ごとに算出すると以下のようになります。
区分数 | 登録時印紙代 5年 | 登録時印紙代 10年 |
---|---|---|
1 | ¥17,200 | ¥32,900 |
2 | ¥34,400 | ¥65,800 |
3 | ¥51,600 | ¥98,700 |
4 | ¥68,800 | ¥131,600 |
5 | ¥86,000 | ¥164,500 |
* 商標登録にかかる費用のまとめ(出願と登録の費用)
出願にかかる費用と登録にかかる費用をまとめると以下のようになります。
ここでは、中間応答費用はケースによってかからないこともあるため、含めません。
区分数 | 出願時印紙代 | 登録時時印紙代 5年 | 合計 |
1 | ¥12,000 | ¥17,200 | ¥29,200 |
2 | ¥20,600 | ¥34,400 | ¥55,000 |
3 | ¥29,200 | ¥51,600 | ¥80,800 |
4 | ¥37,800 | ¥68,800 | ¥106,600 |
5 | ¥46,400 | ¥86,000 | ¥132,400 |
区分数 | 出願時印紙代 | 登録時時印紙代 10年 | 合計 |
1 | ¥12,000 | ¥32,900 | ¥44,900 |
2 | ¥20,600 | ¥65,800 | ¥86,400 |
3 | ¥29,200 | ¥98,700 | ¥127,900 |
4 | ¥37,800 | ¥131,600 | ¥169,400 |
5 | ¥46,400 | ¥164,500 | ¥210,900 |
* 選択する「区分」の数で費用が変わる
出願・登録にかかる費用は、区分の数に応じて変わります。
特許庁に支払う費用が区分ごととなっているのは、これまでの制度上の変遷によるところもありますが、他人の使用を排除できる強力な権利(商標権)を付与するにあたり、不必要に広い権利とならないよう相応の費用(負担)を求めるとのメッセージが込められているのではないでしょうか。
特許事務所に支払う費用については、区分が増えれば検討対象が広がり、調査負担が大きくなることから、区分ごとの料金体系になっています。
Cotobox検索ページで、区分の一覧をご確認いただけます。
– 3区分の商標を出願する場合の費用例
「飲食店の情報サイトの名前」に関する商標を取得する場合、例えば以下のような区分が想定されます。
①オンラインでのサービス提供 <42類>
②飲食の知識の教授 <41類>
③広告収入を伴う場合 <35類>
3つの区分で取得する場合、以下の特許印紙代が必要です。
登録料は5年分で計算しています。
費用項目 | 計算式 | 金額 |
---|---|---|
出願費用 | 3,400+(8,600×3) | 29,200円 |
登録費用 | 17,200×3 | 51,600円 |
合計 | 29,200+51,600 | 80,800円 |
– 多数の区分の商標を出願するの場合の費用例
キャラクターなど汎用性が高く、より多くの区分で取得する可能性がある場合は、以下のように多数の区分が必要になることもあります。
①文房具類 <16類>
②かばん類、袋物 <18類>
③クッション、まくら、家具 <20類>
④布製身の回り品(ハンカチ・タオルなど) <24類>
⑤洋服、履物 <25類>
⑥おもちゃ、人形 <28類>
⑦菓子、パン <30類>
7つの区分で取得する場合、以下の特許印紙代が必要です。
登録料は5年分で計算しています。
費用項目 | 計算式 | 金額 |
---|---|---|
出願費用 | 3,400+(8,600×7) | 63,600円 |
登録費用 | 17,200×7 | 120,400円 |
合計 | 63,600+120,400 | 184,000円 |
【更新にかかる費用】
商標には期限日(存続期間満了日)があるため、更新する際は所定の手続きと、費用の納入が必要です。更新料は、以下の通りです。
■ 10年ごとの一括納付の場合、[区分の数×43,600円]です。
■ 5年ごとの分割納付の場合は、前期・後期とも[区分の数×22,800円]
詳しくは以下のページで解説しています。
▼商標の更新にかかる費用
なお、特許庁の「特許(登録)料支払期限通知サービス」を利用することで、更新のお知らせをメールで受け取ることができるようになります。
サービスの内容の詳細は特許庁のホームページをご参照ください。
▼特許(登録)料支払期限通知サービスについてhttps://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/kigen_tsuchi_service.html
【減免制度について】
特許や実用新案では特許料等の軽減・免除の制度がありますが、商標には原則ありません。
商標には例外として、地域団体商標において手数料の軽減措置があります。ただし、軽減措置の種類と対象者及び手続きについて制限があります。
地域団体商標の手数料の軽減措置については、特許庁のページをご参照ください。
▼地域ブランドの保護は、地域団体商標制度で
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/chidan/index.html#intro
商標と特許の違いについて解説したページはこちらです。
▼商標権・特許権・意匠権・著作権の違い
【商標登録の依頼先別の費用】
– 自分で手続きする場合の商標費用
特許庁に支払う費用(印紙代)と、必要に応じて電子化手数料・郵送費が必要です。
弁理士を介さずに自分で直接特許庁に手続きを行うので、弁理士に支払う費用(弁理士手数料)は不要です。
【自分で手続きした出願登録の費用合計:1区分5年登録の場合】
・特許庁に支払う費用(印紙代)
出願時 12,000円
登録時 17,200円
・合計 29,200円
※電子化手数料や郵送費はケースによってかからないこともあるため合計費用には含めていません。
自分で直接特許庁に手続きする場合は、特許庁の審査がスムーズに進めば、約3万円で済ませることができます。
– 一般的な特許事務所(弁理士)に依頼する場合の商標費用
特許庁に支払う費用(印紙代)のほか、弁理士に支払う費用(弁理士手数料)がかかります。
弁理士に支払う費用(弁理士手数料)は、事務所により金額は様々ですが、ここでは1つの参考として日本弁理士会が実施した弁理士報酬のアンケートの結果を抜粋して紹介します。
【弁理士に支払う費用(弁理士手数料):1区分の平均値】
・出願時 66,989円
・中間応答時(意見書) 47,907円
・中間応答時(補正書) 40,579円
・登録時 45,409円
以上の費用に、特許庁に支払う費用(印紙代)が加算されます。
【特許事務所(弁理士)に依頼した出願登録の費用合計:1区分5年登録の場合】
・出願時
特許印紙代 12,000円
弁理士手数料 66,989円
・登録時
特許印紙代 17,200円
弁理士手数料 45,409円
・合計 141,597円
※中間応答費用はケースによってかからないこともあるため、合計費用には含めていません。
特許事務所(弁理士)に依頼した場合、平均で、約14万円がかかります。
依頼する事務所によって金額が異なりますので、事前に見積もりを取りましょう。
– オンラインサービス事業者を通じて依頼する場合の商標費用
Cotoboxなど、オンライン上で商標登録を依頼できる専門サイトがあります。
専門サイトのサービス事業者を通じて手続きする場合、料金に弁理士手数料も含まれているため、別途弁理士への費用を支払う必要はありません。
また、クレジットカードなどのオンライン決済が利用できるサービス事業者も多く、郵送費や振り込み手数料などもかからないというメリットもあります。
【オンラインサービス事業者(Cotobox)を通じた費用(弁理士手数料):1区分で税込】
・出願時 11,000円
・中間応答時(意見書) 55,000円~
・中間応答時(補正書) 11,000円~
・登録時 16,500円
以上の費用に、特許庁に支払う費用(印紙代)が加算されます。
【オンラインサービス事業者(Cotobox)を通じた出願登録の費用合計:1区分5年登録の場合】
・出願時
特許印紙代 12,000円
弁理士手数料 11,000円
・登録時
特許印紙代 17,200円
弁理士手数料 16,500円
・合計 56,700円
※中間応答費用はケースによってかからないこともあるため、合計費用には含めていません。
特許事務所(弁理士)に依頼した場合、約6万円で済ませることができます。
【商標登録の依頼先別の費用比較】
* 商標の費用を比較する
依頼先別の1区分5年登録の費用合計と、メリット・デメリットをまとめると以下のようになります。
依頼先 | 1区分5年登録の費用合計 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
■ 自分で手続きする場合 | 約3万円 | ・費用を最小にすることができる | ・書類の不備が発生しやすい ・調べながらの手続きなので時間がかかる |
■ 一般的な特許事務所 (弁理士)に依頼する場合 | 約14万円 | ・専門家に対面で相談できる(電話やメールのみの事務所もある) ・柔軟に対応してもらえる等安心感がある | ・他の依頼先に比べて高い ・事務所によって料金やサービス内容や品質、スピード感が異なる |
■ オンラインサービス事業者 (Cotobox)を通じて依頼する場合 | 約6万円 | ・比較的安い金額で専門家に依頼できる ・最短1日のスピード出願・登録後の商標管理もオンラインで簡単にできる | ・対面の相談ができないことが多い ・サービス内容や品質はさまざま |
* 自分で商標出願する際の懸念点
ここまで読んでみて、「商標出願は難しそう」と感じた方も多いのではないでしょうか。
実際、商標登録を自分で手続きするに当たっては、以下のような理由でつまづいてしまうことが多いようです。
- どの区分を選べばいいか分からない
- 費用がどれくらいになるか見当がつかない
- 専門用語が多くて難しい
- やることが多く、時間がかかる
商標登録の依頼先を、費用の安さだけで選ぶのは危険です。
商標登録の依頼先別の手続きの流れと申請方法について詳しく解説した記事はこちらです。
▼商標登録手続きの流れと商標出願の方法を解説
商標登録は、事業を保護し、安心して営業活動に取り組むために行います。
せっかくお金をかけて出願するのですから、専門的な知識に基づいて、早く確実な手続きができるかどうかが重要です。
自分で手続きすればコストは抑えられますが、事業の保護や確実性や迅速性といった点でリスクがあります。
一般的な特許事務所(弁理士)に依頼すれば、専門家による安定したサービスが期待できますが、コストが高くなりやすいというデメリットがあります。
オンラインサービス事業者(Cotobox)は、オンラインでAIなどの最新技術を導入することによりコストを削減し、確実性や迅速性を担保した専門家のサービスが受けられるというメリットがあります。
ご自身にフィットした依頼先を選択すると良いでしょう。
▼弁理士の商標登録における役割とは?
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