「同じ名前が商標登録されているのはなぜ?」
「商標登録をしたら、どこまで権利が守られるのだろう……?」
現在自社の商品やサービスの名前を考えている方は、こんな疑問があるかもしれません。
はたまた、すでに登録されている商標を、こちらが侵害してしまわないかも心配ですよね。
この記事では、「商標権で守られる範囲がわからない」というお悩みをお持ちの方へ、「商標権が及ぶ範囲」についてご説明します。
◇目次
1.商標登録された商品名やサービス名の権利が及ぶ範囲(守られる範囲)について
商標権の権利範囲は、商標と商品や役務(指定商品・指定役務)の組み合わせで決定されます。
まずは、この権利範囲について詳しく解説します。
(1)商標権が及ぶ範囲
商標出願を経て商標が登録されると、商標権が発生します。
商標権は、登録した商標を独占的に使用することができる権利です。
具体的には、商標権は、以下に説明する2つの効力を持っています。
①専用権:権利者が登録商標を独占して使用できる権利
登録に際し特定した商品・サービスの範囲だけの権利
②禁止権:他人の商標の使用を禁止することができる権利
専用権の周辺の、類似範囲についての権利
これらをわかりやすく表したものがこちらの図です。
こちらの図にあるように、商標権の効力が及ぶのは、商標および指定商品・役務が類似する範囲までです。
▼役務とは 商標法では、いわゆるサービスのことを「役務」と呼ぶ。 ▼指定商品・指定役務とは 商標登録を申請する際に、ある区分において、指定した商品または役務。 ▼区分とは 商標でいう区分とは、商品・サービスのカテゴリーのこと。分類、類ともいう。 |
よって、商標と商品・役務の両方が類似している場合は、商標権侵害になる可能性が高いです。
ただし、商標または商品・役務のどちらかが非類似であれば、商標権侵害にはなりません。
少し古い事例ですが、自動車の「PRIUS」とコンピュータの「PRIUS」の併存した事例や、自動車の「Tanto」と冷蔵庫の「Tanto」が併存していた事例もありました。
(2)商標マークの効力は?
「®」や「TM」と書かれたマークを商標の末尾に見つけたことはありませんか。
これらも商標登録に関係するマークです。
その働きについてご説明します。
▼®マーク
このマークはRegistered trademarkの頭文字のRを図象化したものです。
®マークを付けることによって、登録済みの商標であると表明していることになります。
このように商標の保護の強化に一役買っている®マークですが、これを使用できるようになるのはあくまで商標登録した後のことです。
外国からの輸入商品などでは、ルーズに運用されていますが、商標出願したに過ぎない段階で®マークをつけることは、虚偽表示とされるおそれがあるとされています。
一方、商品やサービスを既に展開中の場合、商標出願中であったとしても、何らかの保護をかけたいと思うときもあるでしょう。
そのような場合、下記のTMマークを付けることをおすすめします。
▼™マークとは
Trademarkの略称であり、単に「商標」という意味を持ちます。
法的な拘束力はありませんが、このロゴは自社の商標として考えているという意思を対外的に示す効果があります。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
<TMマークとは何か?Rマーク・SMマークとの違いも解説>
2.商標登録できない商品名やサービス
上述の通り、商標権は、類似の範囲まで他人を排除することができます。
裏を返すと、他人の登録商標と類似する商標は登録することができないということにもなります。
また、商標および商品・役務の類似以外にも商標登録の条件があります。
最も代表的な条件は、自己と他人の商品・役務(サービス)を区別しにくい(識別力のない)商標は、登録ができないというものです。
例えば、商品「りんご」に商標「APPLE」は商品の普通名称に過ぎず識別力はないですが、商品「コンピュータ、スマートフォン」に商標「APPLE」は識別力があります。
その他にも、多くの商標登録のための条件がありますが、代表的なものをいくつか挙げます。
1.公益性に反する商標
2.他人の未登録の周知・著名商標等と紛らわしい商標
商標は、消費者が、ある特定の商品・サービスについて、商標を見ただけでどこの商品・サービスかを判断できるように区別する役割を果たしています。
もし商品「野菜」について「野菜」や、商品「コーヒー」について「コーヒー」などといった商標として独占されてしまうと、他の個人や企業がその単語を使用できなくなり、社会が混乱します。
そのため、上記のような商標が登録できないようになっているのです。
3.商標権を侵害しないネーミング
商標権を侵害しないためのポイントをお伝えします。
(1)商標登録されていないこと
他社の商標登録の有無について、事前に調査をしましょう。
商標権を侵害しないようにするには、すでに出願・登録されている商標の状況を調べることが重要です。
そして、似たものを使わないように注意しましょう。
この事前調査のことを「先行商標調査」といい、誰でも無料のデータベースを使って行うことができます。
J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)やcotoboxを利用することで、出願中の商標や登録済み商標の情報が確認できます。
文字の商標に関しても、図形の商標に関しても調査できますので、名称やロゴを考えて使う前に一通り確認しましょう。
詳しい検索方法は下記の記事にてご確認ください。
<商標検索の方法 – CotoboxとJ-Platpat>
ただ、注意していただきたい点があります。
それは、「商標の同一・類似を主観で判断しない」ということです。
もし近い商標があっても、実際に類似しているかどうかの判断には高度な知識が必要とされます。
また、自分では類似していないと感じても、第三者から見て似ているという判断になれば、侵害に当たる可能性があります。
心配な場合は、商標に詳しい弁理士などに相談しましょう。
(2)その他の商標登録の条件を満たすこと
こちらは商標権の侵害という観点ではありませんが、せっかく考えた名称が登録できないと残念ですよね。
「商標登録できない商品やサービス」でご説明した通り、そもそも商標として登録できない名称でないことを確認しておきましょう。
特許庁のサイトに詳しく条件が記載されています。
<特許庁:出願しても登録にならない商標>
(3)自社の商標を登録する
登録予定の商標に類似するものがない場合は、なるべく早い段階で商標登録出願を行い、商標登録に努めましょう。
「軌道に乗り始めてから商標登録しよう」
「出願出願の費用がないので後にしよう」
と考えてしまう気持ちはわかります。
しかし、商標は出願が一日での早いものが優先されるため、出願を後回しにすると他人に先取されるリスクが高まります。
商標登録を行わないままでいると、他社が類似した商標を使っていても、使用中止を要求することもできません。
そればかりか、他社が先に商標出願して、商標登録を取得した場合、先に使用していた自社が商標権を侵害することになります。
そうなると商品やパッケージを1から作り直す必要が出てくるなど、大きなダメージを被る可能性もあります。
安心して商品の販売や、サービスの提供を始めるためにも、なるべく早くロゴや名称の商標を登録しておきましょう。
それが自社を守り、自社を信頼してくれるお客様を守ることにもつながります。
自社の商品名やサービス名を守る意識がなければ、知らないうちに商標を横取りされ、経営上に悪影響が生じるかもしれません。
4.自社の商品やサービスの商標を侵害されてしまったら
では、もし自社が商標権侵害されてしまった場合はどうなるのでしょうか。
自社商標と同一または類似の商標が第三者に無断で使用されている場合は、下記のような対処を行うことができます。
- 警告状の送付
- 民事訴訟の提起
- 刑事責任の追及
商標権を侵害された場合については下記の記事で詳しく説明しています。
<登録した商標を第三者に使用された場合に取りうる方法>
5.まとめ
この記事では、商標を考える際に留意すべき商標登録についてお伝えしました。
「指定商品・指定役務」が異なれば、同じ商標が登録可能でしたね。
また、せっかく自社が名付けた商品・サービスが商標権を侵害しない・されないためにも、なるべく商品開発の早い段階での商標出願の必要性もご理解いただけたと思います。
現在商標出願をご検討中の方は、Cotoboxの類似商標が登録されていないかを検索してみてください。