
商標登録は、法人・個人どちらでも出願ができます。
また、弁理士等の代理人に頼まず、自分自身で特許庁に直接手続きすることも可能です。
自分で手続きするにしても、代理人に頼むにしても、どちらにもメリット・デメリットがあります。
どちらがいいかは、個々人や事業内容によっても変わってきますので、判断の参考材料の一つとなるように説明したいと思います。
※個人が代理人に頼まずに自分自身で商標の出願をする場合を「個人で」と表現して説明します。
◇目次
1.個人で進める商標登録の手続きの流れ

商標登録の流れは、主に下記の通りです。
- 商標調査をする
- 商標登録願の作成・提出
- 審査結果への対応
- 登録料の納付
それぞれについて簡単に解説します。
1)商標調査をする
登録したい商標と同じ、または、類似する商標がすでに特許庁に出願されていると、せっかく出願しても登録できないことがあります。
事前に調べておくことが大切ですが、無料で使えるサイトとしては、[特許庁のJ-PlatPat]や[Cotobox]があります。
商標登録されているかどうかは、弊社cotoboxの商標検索ページから無料で調べられます。
それでは、何をもって「類似する商標」と判断するのでしょうか?
商標の類似は、以下の2点について、両方とも類似と判断された場合に類似する商標と判断されます。
まず、1つ目は、商標の「称呼(聞こえ)」「外観(見た目)」「観念(イメージ)」の三つの要素をもとに商標を比較したときに、類似するのかという点です。
2つ目は、商標の出願時に、権利を取りたい範囲として指定する商品・役務(指定商品・指定役務)が類似するのかという点です。
指定商品・指定役務とは、特許庁が定めたもので、全45種類の区分に分かれています。
自分が権利を取りたい商品や役務が、どの区分のどの商品・役務に当たるのかを確認し、選択する必要があります。
区分が分からないというときは、上記で挙げた[J-Plat Pat]や[Cotobox]などで調べることが可能です。
例えば「化粧品の権利を取りたい」と考えた場合、[J-PlatPat商品・役務名検索]にて、検索キーワードに「化粧品」と入力すると、区分の候補がでてきます。
Cotoboxを使う場合は、下記区分の解説をご参照ください。
商標の区分とは ~45種類を全部解説します
2)商標登録願の作成・提出
商標登録をするためには、特許庁へ「商標登録願」という出願書類を提出する必要があります。
この書類は、郵送・特許庁へ持参・電子出願が可能です。
しかし、電子出願は、事前準備に手間がかかるため、個人で出願される場合は郵送又は持参が一般的なようです。
出願書類の様式は、「知的財産相談支援・ポータルサイト」にて確認が可能です。
出願書類には、「商標登録を受けようとする商標」や、その商標にて権利を取りたい「指定商品・指定役務」、「商標登録の出願人の住所と名称」など、様式に沿って必要事項を記入します。
様々な決まりがありますので、書き方ガイドなどを参考にするとよいでしょう。
なお、商標に使える文字には制限があるのか、アルファベットやカタカナどちらも取るべきなのだろうか、など迷われることが多いと聞きます。
3)審査結果への対応
特許庁へ出願書類を提出すると、順次、特許庁にて審査が行われます。
現状の審査期間は、約3~8か月程度です。
早期審査の制度を活用すれば、2か月~3か月程度に短縮されます。
審査内容は多岐に渡りますが、まずは上記出願書類が規則に則って正確に記載されているのかという方式的な審査が行われます。ここで、不備が発生した場合は、補正を求める通知が発せられます。
上記にて不備がない出願や不備が解消した出願は、出願書類に記載された商標と類似する商標がないか等の実体的な審査が行われます。
実体的な審査にて、登録できない理由が発見された場合は拒絶理由通知書が発せられ、登録の運びになると「登録査定」という通知が届きます。
拒絶理由通知が発せられた後は、意見を述べる機会が与えられます。
拒絶理由通知という名前から、この通知が届くともう権利化が難しいと思ってあきらめてしまう方もいますが、内容によって適切に対応すれば解消するものから、複雑なものまで様々です。
審査官が対応案を示してくれているものであれば、意見書又は手続補正書にて対応をすることで解消できるケースも多くあります。
・商標の拒絶理由通知書を受け取った方へ:https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/shohyo/kyozetsu/index.html
・商標登録の拒絶理由通知について:https://cotobox.com/primer/notice-of-reasons-for-refusal/
そのため、拒絶理由通知の内容をよく確認したうえで、対応を行うようにしましょう。
ご自身での対応が難しいと思われる場合には、近くの相談窓口や専門家に相談をすることで解決ができる場合もあります。
近くの相談窓口を探す:https://chizai-portal.inpit.go.jp/area/
4)登録料の納付
登録査定の通知が届いた後、登録期間5年又は10年を選び、30日以内に登録料を納付します。
これにより、晴れて登録商標となり、登録証が発行されます。

[参考記事]
・初めてだったらここを読む~商標出願のいろは~
・Cotoboxを利用した商標登録の流れ(商標検索〜登録完了)
2.個人でする商標登録の費用

個人で商標登録をする場合、必要な費用は、主に出願時の特許印紙代と登録時の特許印紙代です。
特許印紙は、郵便局又は特許庁の窓口にて購入可能です。
なお、郵便局によっては、当日の用意が難しい場合もありますので、事前に確認しておくことが安全です。
印紙代は、区分数に応じて費用が変わります。下記の計算式を参考にしてください。
また、郵送(書面)にて出願する場合は、印紙代の他に電子化手数料と郵送に係る費用実費がかかります。
電子化手数料は出願後に追って納付書が郵送されてきますので、その納付書に基づいて支払います。支払いをしないと、出願が却下されますので注意が必要です。
出願料: 3,400円+(8,600円×区分数)
登録料: 32,900円×区分数
※書面で提出した場合の電子化手数料:2,400円+(1枚×800円)=3,200円
※書面で手続する場合の電子化手数料について:https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/paper/denshika.html
※令和4年4月1日施行の特許法等改正に伴い、特許印紙代の改定がございます。
国内出願に関する料金は手続料金計算システムでも計算が可能です。
3.商標登録ができないもの
商標登録には、登録することができないものもあります。
ひとつは、一般的によく使われている言葉(普通名称)であって、独占されると他の人が困るため登録に適さないようなものです。
例えば、商品「いちご」に対して「ストロベリー」という商標で出願しても、この理由で拒絶を受けることになるでしょう。
また、個人名義で、将来使いたい法人名があるからと、「株式会社〇〇」や「〇〇法人」という法人名を出願することも拒絶の理由になります。法人名の出願は、出願人と法人名が一致していないといけません。
そして、個人の方で多いのが、出願人を個人ではなく屋号で出願したいというご要望です。
商標の出願書類には、出願人のお名前や住所を記載しますが、これらは公開情報となりますので、個人名が公開されるのに抵抗がある方が屋号を希望するケースがあるようです。
しかし、屋号での出願はできません。商標の出願人となることができるのは、個人か法人かのどちらかとなります(※)。
(※)一部、特殊な出願においては、組合などでの出願は可能です。
4.まとめ
以上より、個人で手続きするメリットとデメリットをまとめ
個人で手続きして出願するメリットは、代理人に支払う費用が不要となる点です。
デメリットとしては、権利範囲がずれてしまい、商標権の取得が意味を成さないものとなってしまうことです。目的に合った権利範囲を検討することは、弁理士(その道のプロ)であっても難しいことです。
また、拒絶通知が来た場合にうまく対処できなければ、商標権をとれない、ということもあります。
商標出願にかけた時間や印紙代などの損失、商標権の取り直し、サービスやマーケティング施策の変更などが必要になるケースもあります。
許容できるリスクとかけられる時間のバランスを考慮して、個人での出願か代理人への依頼をするかを検討することが良いかと思います。仮に拒絶されても、すぐに商標名を変更可能など、リスクを許容できる事業である、願書作成のためにある程度時間が取れるなどの場合は、個人で出願してもよいかと思います。
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