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商標の使用権と利用の仕方について


1.商標の「使用権」とは

商標を登録したら、商標権者は、自身での使用に加え、他者に対してその登録商標の使用をさせる(設定または使用許諾)ことができます。いわゆる商標の「ライセンス」です。

これを商標の「使用権」といい、商標法には、その設定あるいは許諾の内容によって規定がされており、それぞれ「専用使用権」、「通常使用権」(「独占的通常使用権」)と呼ばれています。(その他「法定使用権」もありますが、ここでは説明の対象外とします)

商標権は、実体のない権利ですので、商標権者自身の使用と同時に、他者に対しても使用をさせることができます。

<参照:「商標権とは」(https://cotobox.com/primer/trademark-rights/)>

 

たとえば、有名なコンビニチェーンが、フランチャイザーとしてそれぞれの店舗営業主であるフランチャイジーにそのコンビニの名称(ブランド名)を使用させたり、有名なスマートフォンメーカーが、そのスマートフォンの名称(ブランド名)を、販売代理店や通信事業者に使用(宣伝、販売)させたりしているのは、この商標の「使用権」についての契約(いわゆるライセンス契約)に基づいているからです。

このように商標権について、商標権者が他者に使用をさせることは、いわゆるブランドのライセンスビジネスとして社会に浸透しており、経済活動では無縁ではいられない行為といえます。

商標権者は、商標のライセンスによって、商標の活用、普及が図れますし、そこから使用料収入(ライセンスフィー)を得ることもできます。

たとえば自分のECサイト上で、有名ブランドの商品を販売するために、それを表示(商標的使用)して宣伝等する場合、本来は商標権者に対して使用をさせてもらうための許諾等を得る必要があるのです。もしそのブランド名の商標権者に無許可でこれを行ってしまうと、場合によっては商標権の侵害(使用差止や損害賠償請求の対象)となってしまうことがありますので、注意が必要です。

2.「専用使用権」、「通常使用権」(「独占的通常使用権」)について

(1)「専用使用権」

「専用使用権」とは、商標権者の設定行為で定められた範囲内で、使用権者が商標を指定商品又は指定役務について独占排他的に使用できる権利であり、専用使用権者は、これを侵害する者に対して自ら差止請求や損害賠償請求等をすることができます。

登録が効力発生のために必要な要件となっています(商標権者には、登録に協力する義務があります)。専用使用権者に認められた権利範囲を第三者に公示するためです。

専用使用権が設定されますと、専用使用権者のみが商標を使用することができ、商標権者もその設定された範囲については使用ができなくなります。その性質から、専用使用権は、同一の範囲には1つの専用使用権しか設定できないということになります。

専用使用権者は、商標権者の承諾によりその設定範囲内で、他者に通常使用権を許諾することもできます。

その他、専用使用権の移転や質権の設定、放棄などについても規定がされています。

なお、国等に関する商標、地域団体商標に係る商標権には、専用使用権を設定することができません。

 

(2ー1)「通常使用権」

「通常使用権」は、商標権者から許諾を受けた範囲で、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をできる権利です(排他性はありません)。許諾行為で定めた範囲内において、商標権者から商標権を行使(差止請求等)されない旨を約するものです。

許諾行為で、期間、地理的範囲、使用範囲(対象商品・役務)、対価などを契約(合意)により定めます。

また、登録は要求されません(ただし、第三者への対抗要件としては登録が必要です)。

商標権者は、他人に通常使用権を許諾した後も、同範囲で自ら商標の使用が可能ですし、同内容の通常使用権を複数人に許諾することもできます(※後記の「独占的通常使用権」は例外)。

通常使用権は排他性がないため、通常使用権者は、無権原の第三者に対して商標の使用を差止めたり、損害賠償を請求することはできません。

通常使用権は、その登録をしたときは、第三者に対しても対抗することができます。

その他、通常使用権の移転や質権の設定、放棄などについても規定がされています。

 

(2-2)「独占的通常使用権」

「独占的通常使用権」は、通常使用権の許諾契約において、商標権者から通常使用権者に対して、商標の使用について事実上の独占的地位を認めるものをいいます。

ただし、専用使用権と同じような第三者に対する損害賠償請求権や差止請求権を有するかどうかは見解が分かれており、あくまでも商標権者に対する債権的な地位にすぎないと考えられています。

3.それぞれの「使用権」のメリットとデメリットなど

(1)「使用権」を選ぶ際の注意点

許諾(設定)者側(=商標権者・ライセンサー)と、使用権者側(=ライセンシー)の間で、どのような内容の「使用権」を許諾(設定)するかによって、上記いずれの「使用権」となるのかが変わってきます。

そのライセンス契約の目的に沿った「使用権」を選ぶことが重要です。また、その内容は双方で具体的かつ明確に定めておくことが必要となります(「使用」行為の範囲、期間、地理的範囲、使用対象範囲:対象商品・役務、対価など)。

ライセンサーにとっては、ライセンシーの商標の使用によって、その商標の信用や名声が高まりブランド価値が上がるという効果が期待でき、使用料を得ることが可能となります。その一方で、ライセンシーの不適切な使用によっては、逆に商標の信用や名声がおとしめられ、価値を下げてしまうおそれもありますので、信頼できる相手との目的に合った適切な使用権を許諾(設定)することが重要です。

対するライセンシーにとっては、その商標の権利内容(権利範囲や期間など)をしっかりと確認したうえで、自身の目的に合った内容の使用権を許諾(設定)してもらうようにする必要があります。

 

(2)それぞれの比較、メリットとデメリットなど

前記のように、まずその商標について、ライセンシーが独占的に使用をするか否かで、「専用使用権」か「通常使用権」、あるいは「独占的通常使用権」か「通常使用権」かの選択がなされます。

また、仮に無権原で第三者にその商標を使用をされてしまった場合に、ライセンシーにもその第三者に対する権利行使(差止請求や損害賠償請求など)をできるようにするかどうかによって、「専用使用権」か「通常使用権」かが選択されることになります。このため、「専用使用権」の場合は、ライセンシーにも商標の使用状況の管理をするなど、より主体的な商標利用をする必要が出てきます。

「専用使用権」の場合、ライセンシーが使用する範囲では、ライセンサー(商標権者)が使用することができなくなってしまいますので、当然にライセンシーが主たる商標使用者としての商標管理などをしていくことが必要になります。

また、いずれの「使用権」にも、ライセンシーの商標の使用によっては、その商標権(ラランド)の価値を左右してしまう(たとえば商標を付した商品がヒット商品となったり、あるいは不良品や粗悪品であることなど)もありますので、ライセンサー(商標権者)による商標使用の監督や管理も必要となります。これを前提としたライセンス契約を結んでおくこと(どの程度の関与をするのかなど)が大切です。

そして、「専用使用権」と「通常使用権」の前記性質の違いによって、ライセンサーは、ライセンシーに使用させる権利の内容を定めていくこととなります。

(※なお、ライセンサーは、ライセンシーとの間の使用権の許諾(設定)をしていくうえでは、その関係性(立場)に応じて、独占禁止法への抵触についても配慮が必要です。)

ライセンス対価(ライセンスフィー)、いわゆるロイヤルティーについても、無償のものからより大規模なフランチャイズ契約に伴うものまで、幅広く設定されることになります。その商標(ブランド)の価値に見合った対価、「使用権」の内容に見合った対価を定めることになりますので、慎重な検討が必要です。

 

<対価の設定例>

・販売額に応じた対価:商品の販売価格に対する一定割合で決定される。実務上、多く採用されています。

・商品の対物対価:対象商品の単位あたりの固定額で決定される。販売をはじめ、製造、使用行為の対象商品に対して設定されます。

・定額対価:はじめから一定額で設定。契約で一律に設定されます。

4.最後に

上記のように、商標を登録した後は、その商標権の価値を十分に活かすべく、自己の使用だけではなく、商標の「使用権」(ライセンス)をうまく活用して、その商標のブランド力を向上させていくことも、ぜひご検討下さい。

なお、上記のように商標の「使用権」に関わるライセンス契約は、一般の契約と異なり、検討しなければならない事項が細かく多いため、漏れも多く、後のトラブルにもつながりやすい契約といえます。必要な場合は、専門家(弁護士や弁理士など)と相談のうえ、適切なライセンス契約を結べるように心がけてください。

 

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    執筆者
    cotobox編集部
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