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中国の商標登録における現状と対策

インターネットの通信販売サイトを通じて行われる電子商取引(越境EC)が年々増加しています。

経済産業省の調査(参照:令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査))では、日本を含む世界中で年々市場が拡大し、2027年までにかけて、世界の越境EC市場は右肩上がりで成長することが予想されています。

対中国との取引も例外ではなく、中国向けの越境EC市場は、1兆6,558億円と前年比で7.9%アップの高成長を実現しています。

一方で、[越境ECで自社ブランドを海外で展開する際に、商標を事前に申請しなかったことを後悔したという人が6割を超えている]という結果が発表されています。

「メリットが分からなかった」「他の業務を優先していた」〜cotobox、「海外展開と商標登録の重要性」に関するレポートを発表〜

本記事では、中国でビジネスを展開うえで重要な商標登録について解説します。

中国の商標登録の現状と課題

冒認商標

2021年の日本の出願件数は、18.5万件ですが、中国の商標出願数は、934.8万件(注)です。

中国の出願数は区分数で算出しており、人口も日本より多いため、正確に比較することはできませんが、それを踏まえても圧倒的であるといえます。

特許行政年次報告書2021年版 (P28~30)

これだけの出願件数があると、特に悪意もなく、自身の商標と類似する商標がすでに他人に取られてしまっている場合があります。

一方、多数の出願の中には、正当な権利を有しない他人によって商標が出願・登録される事例(冒認商標)も見られます。

インターネットによる情報収集が活発な現代では、外国で自身の商標が他人によって先取りされるリスクが高まっており、その結果、海外進出の妨げとなるケースもあります。

この点に関しては、日本の特許庁も警鐘を鳴らしています。

海外における商標の抜け駆け出願(冒認商標)対策

特に中国では、商標登録の売買が日本よりも一般的に行われており、商標売買の取引サイトまで存在します。商標を売買して利益を上げるために、多くの商標出願が行われているのです。

冒認商標の対策については後ほど解説します。

中国の消費者の正規商品への意識の高まり

中国の消費者が越境ECの事業者に改善を望むこととして「真正商品であることの保証」が一番に上がっています。

本来、真正商品であることを示す手段の一つに商標がありますが、早めに商標登録を取得していなかったばかりに商標を横取りされ、予想していなかったトラブルに合うケースも少なくありません。権利者であるべき企業が商標変更を余儀なくされたり、最悪の場合、中国事業からの撤退を余儀なくされたりするケースもあります。

また、2019年には、中国で「電子商取引法」が施行され、大型ECモールサイトを展開する事業者に対して厳しい義務が課されることになりました。知的財産権を侵害していたり、模倣品を販売している出品者を放置した場合、制裁金が課せられます。

そのため、プラットフォーマーは、商標権者から申し立てがあった場合、出品商品の削除を行うことになります。もしも、現地で商標を他人に取られていた場合には、真正商品であるはずの自身の商品が削除されてしまうという事態も起こりうるのです。

中国と日本の商標法の違い

審査官が商標出願を審査をするという審査主義や、先に出願した者が登録を得ることができるという先願主義、指定商品・役務の区分は国際分類を採用していることは、日本でも中国でも同じです。

また、主な商標登録の条件は、①識別力があること、②先行商標との類似しないことであり、これらも同じです。

ただし、実際の識別力の判断基準や、先行商標との類似判断基準は、日本とは若干異なります。

また、日本では世界的には珍しく、外国で周知な商標でも一定条件下で保護しますが(商標法第4条第1項第19号)、中国では中国国内で周知でないと保護されません。

中国での商標登録出願の流れ

中国へ出願する2つの方法

中国への商標登録出願の方法は、直接出願とマドプロを使った国際出願の2つのルートがあります。

直接出願は、日本から中国の特許事務所に出願依頼して、中国の国家知的産権局(CNIPA)に出願するというルートです。順調に行った場合、出願から約4カ月で、初期登録査定公告に進みます。

もう一つの方法は、日本の特許事務所からマドプロを使って国際出願する方法です。審査期間は、直接出願よりも長くなりますが、18カ月を超えることはありません。

登録要件の審査は、直接出願であっても、マドプロ出願であっても、大差はありません。

なお、指定商品・役務の記載については、アルファベティカルリストやTM5の表現に限定される直接出願よりも、国際事務局で認められた表現が認められるマドプロ出願の方が、若干多様な表現が可能です。

なお、中国では、第35類の小売り等役務の記載が、医薬品などごく一部の商品にしか認められません。小売り事業者も、各商品の区分で商標登録を取得する必要があります。

費用は、中国1か国だけなら、中国直接出願の方が安くなります。

反対に、中国を含めた多くの国に出願するときは、マドプロの方が安くなります。

中国での商標調査

中国で出願する前に、商標調査を行います。

商標調査では、商標の意味をチェックする他、商標に識別力があるかどうかや、先行商標の有無について確認する必要があります。

特に、識別力に関しては、日本では思いもしない判断となることがあります。
日本では、品質誤認と特許庁が判断しても使用はできるときがある一方で、中国では、法的に使用できなくなることがあります。

そのため、識別力の判断は、中国の商標専門の弁護士に依頼しましょう。

先行商標の有無については、日本と同様に、それを確認せずに商標を使用し、他人がすでにその商標を登録していたという場合に商標権を侵害してしまっていることになり、商標の使用を継続できないというリスクがあります。事前に商標調査をして、他人の権利に抵触しないかを確認することが重要といえるでしょう。

また、商標調査で、使用予定の商標を、他人が先取りしていることを見つけた場合、商品販売前であれば、商標変更などのリスク回避のための対応策を選択することができます。

中国の商標データベースを使って調べることもできますが、識別力の判断はできませんし、また、先行商標との関係においても類似までは出ませんので、それだけに頼ることは大変危険です。

よって、中国の商標調査は、経験のある日本の弁理士などを通じて、商標を専門にしている現地代理人に依頼することをおすすめします。

中国で出願する商標の注意点

中国に出願する商標については、特に次のような注意が必要です。

中国語のコミュニケーションの基本は、漢字です。

商標も漢字表記が基本です。

すでに、漢字表記の商号や商標がある場合は、それをそのまま中国でも使用することができます。

一方、アルファベットなどの漢字表記以外の商標は、そのまま出願することもできますが、中国市場で受け入れてもらうために、元の表記とは別途漢字の商標を作成することを検討することが多いようです。

漢字で元の商標の音に近い商標(音訳)、あるいは、意味が似ているか、意味が良い(意訳)商標を選びます。

この時、漢字の組み合わせや発音が、全体として現地でよいイメージを感じさせる言葉であるかを確かめることが重要です。漢字の選択は認知や売上に直結しますので、漢字の選択は重要です。

中国の現地代理人は、他国代理人に比べて、漢字商標の意味のチェックを丁寧にする傾向があります。

前述の商標調査時に、漢字商標の意味のチェックをしっかりと確認してもらえる現地代理人に依頼することをおすすめします。

なお、日本語のひらがなやカタカナは、中国では図形商標として扱われます。日本のブランドイメージを出したいときなどは、積極的にひらがなやカタカナの商標を取得することも検討するとよいでしょう。

また、中国の指定商品は、前述のように、国際分類を採用しているため基本は日本での出願と同じです。しかし、日本のように、上位概念(短冊表現)では指定できません。最小概念の個別商品・役務で商品・役務を記載する必要があります。

また、指定商品・役務が10個を超えると、追加料金が必要になります。そのため、指定商品・役務を10個以内に抑えた出願が多いようです。

なお、中国では、医薬用、獣医用、衛生製剤および医療用品の小売・卸売に限って、小売り等役務の指定が認められています。小売り等役務を指定したいときは、原則は商品区分で対応しますが、将来、第35類で小売り等役務が認められるときを見越して、第35類でも一定の役務をしておくという実務があります。

中国における冒認商標への対策

中国では、商標などの冒認出願(登録)が問題になっています。

日本の都道府県の地名・有名なブランド名や著作物の題号が、中国で無関係の他人によって先取りさてしまったという事例があります。

そのような場合には、以下のような対抗手段ができないかについて専門家と相談してみるとよいでしょう。

最も代表的な手段は、異議申立又は無効請求を起こすことです。

相手方の商標が登録前であれば、異議申立が可能です。

登録後は、無効請求が可能です。

請求の理由としては、主に下記3点が考えられます。

  1. 使用を目的としない「悪意の出願」
    上述の商標売買の取引サイトに多数出品しているのに、使用実績が見当たらないようなケースがある場合、転売目的で悪意の出願であると捉えられるケースがあります。相手の悪意を証明できないか、様々な角度から検討するためにも、コミュニケーションの取りやすい信頼できる現地代理人とやり取りを行うことがよいでしょう。
  2. 先使用の商標であること
    中国国内で周知となっている必要があります。
    周知性は、使用実績や認知度を基に判断されますが、外国での実績は考慮されない点は日本とは異なります。たとえ日本で有名であっても、中国での実績・認知度がなければ、先使用の商標であることは主張しても認められないと考えておいた方がよいでしょう。
  3. その他の先行権利を侵害したこと
    商号や、著作権に基づく主張が考えられます。特に、冒認出願の前に著作権が発生している場合は検討する余地があります。中国では、知的財産権関連の民事訴訟の内、著作権にかかる訴訟が最も多い状況もあり、著作権の活用が行われている実情があります。著作権登録を行うことも視野に入れるとよいでしょう。

また、中国でのビジネスの際に、代理店を通じて商品を提供する場合もあると思われます。

しかし、残念ながら、代理関係にある者による冒認出願も無いとはいえないため、代理店との契約には「商標を勝手に出願しない」という条項を必ず入れるようにしましょう。この条項違反を理由に、無効請求を起こすことができる場合があります。

更に、別の対策として不使用取消請求があります。

3年以上使用されていないと思われる場合、例えば、インターネット検索で使用されている状況が確認できなければ、チャレンジしてみるのもよいでしょう。

取消の決定がなされるまでには最低半年程度の時間がかかりますが、不使用取消請求は、無効請求よりは簡便な対応方法です。

もしも、冒認出願(登録)を発見した場合は、特許庁の支援策を活用することも検討しましょう。

中国・台湾で日本の地名や、自身の商標が他者により出願登録された場合の総合的支援策について

最終手段として、商標売買の取引サイトなどで商標を購入するという選択肢もあります。

しかし、これは冒認商標の出願を助長する行為ともいえます。

また、外国の企業名義で打診や交渉をすると価格を釣り上げられるなど、交渉に不利な影響が生じるリスクがあります。そのため、事前に現地の専門家とよく相談すべきでしょう。

上記のように、冒認登録されたものへの対抗手段はあるものの、実際にその対策が認められるハードルは高く、費用や時間がかかるものが多いのが現状です。

例えば、「クレヨンしんちゃん」に関連する商標を中国企業により勝手に登録されていた事件においては、勝訴まで約7年以上もの時間がかかっています。

また、良品計画では中国企業と20年近くにわたって係争を続ける事態となっています。

中国における『クレヨンしんちゃん』訴訟の勝訴判決について

「無印良品」商標に関する一部報道について

最後に

インターネットによる情報収集が活発な現代では、日本におけるブランドイメージに便乗して、他人によって中国でこちらの商標等が先取りされ、中国展開の妨げとなるリスクがあります。

先願主義である中国では、商標登録は早い者勝ちであり、一度登録されてしまった後に取り消すことは非常に困難です。

中国への具体的な進出予定がある場合はもちろん、将来的な可能性がある場合も、何より先に商標出願をし、商標権を取得しておくことが大切です。

そのため、早期の商標出願が最も効果が高い対策です。

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    執筆者
    弁理士 西野 吉徳
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