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ロゴの商標登録はどうすべき?


新しいビジネスを立ち上げるとき、ロゴの商標登録について考えることがあると思います。

Cotoboxのユーザーからも、日々、「ロゴの商標登録はどうしたらよいでしょう?」といった質問や相談が数多く寄せられています。 

そこで、ロゴの商標登録について、商標の専門家である弁理士はどんなことを考えているのか解説していきます。

この記事を読むことで、ロゴの商標登録を弁理士に相談するときに注意すべきポイントが分かるようになります。

1.ロゴとは?

ロゴとは、そもそも何を意味するのでしょう?

ロゴは、様々な種類を包含する広い意味を有しており、ロゴタイプ(文字)+シンボルマーク(図形・イラスト)=ロゴマーク(文字と図形・イラスト)と大きく3つの種類に整理することができます。

ブランドデザイン「ロゴ、マークについて」https://brandesign.jp/about-lo-ma.html

「ロゴ」という言葉は、さまざまな意味を持ちます。たとえば、文字とほとんど同様のデザインであるロゴタイプ(例:国士舘大学)、文字とイラストを組み合わせたロゴマーク(例:八芳園)などがあります。また、色やデザインのバリエーションも存在します。このため、実際にはどの「ロゴ」を指すのか、認識を一致させることが重要です。

弁理士に相談するときには、「ロゴ」という端的な表現だけで話しを進めるのではなく、実際のロゴデザインを全て見せることを強くお勧めします。

2.ロゴの商標登録について

(1)商標登録の流れ

ロゴの場合も、文字の場合と商標登録の流れは同じです。

①調査 → ②出願 → ③審査 → ④登録の流れで進みます。

詳しくは、「2.商標登録における弁理士の役割とは?」の記事をご参照ください。

(2)ロゴの商標調査は大変

ロゴの場合、文字の場合と異なる点があります。

ロゴ(シンボルマーク、ロゴマーク)の商標調査は、文字の商標調査と異なり、大変な労力と時間がかかります。「1」で説明したように、ロゴには、ロゴタイプ(文字)、シンボルマーク(図形・イラスト)、ロゴマーク(文字と図形・イラスト)と様々な種類があるため、ロゴのデザインの構成要素によって、文字の調査と図形・イラストの調査を、別々に2件分行わないと判断を誤るケースもあります。

ロゴ(シンボルマーク、ロゴマーク)の商標調査では、文字と異なり、データベースの検索項目にテキスト文字を入力した検索ができません。テキスト文字の代わりに、標章(マーク)の図形要素を分類した図形等分類コードを入力する必要があります。

そのためには、ロゴの構成要素から、適切な図形等分類のコードを見定めなければなりません。

ロゴマークも、すでに商標登録されているかどうかまで、
画像の商標検索ページから無料で調べられます。

商標検索ページへ(無料)

 

(3)図形等分類コードの例

例えば、登録第5137030号のシンボルマークには、次の図形等分類コード「5.5.13」「5.7.23」が付されています。

 5.5.13 リンゴ

 5.7.23 一つの果実

登録第5137030号(参照:特許情報プラットフォーム)

このロゴ(シンボルマーク)は、比較的シンプルに捉えることができ、図形等分類コードが2個のみで済みますが、ロゴの構成によっては、多くの図形等分類コードが必要です。

例えば、話題となったオリンピックのロゴ(登録6008748号)は、22個もの図形等分類コードが付されています。

なお、オリンピックのロゴには、「29.1.3.1緑(文字)」「29.1.3.2緑(図形)」のコードも付されていますが、ロゴに緑の文字や図形の要素はなく、2つのコードは誤りと分かります。特許情報プラットフォームJ-PlatPatの情報が常に正しいとは限らない点に注意してください。

26.1.1
26.1.3 一つの円又は楕円
26.3.2 二つの三角形、一方が他方の中にある二つの三角形
26.3.4 並置・結合又は交差する複数の三角形
26.3.6 一つ以上の凹又は凸状の辺を有する三角
26.4.2 長方形
26.4.5 一つの四角形
26.7.25 その他の並置・結合又は交差する各種の幾何図形の組合せ
27.5.1.12 L,l
27.5.1.20 T,t
27.5.21 一文字
27.5.22.92 二文字のモノグラム
29.1.1.1 赤(文字)
29.1.1.2 赤(図形)
29.1.2.2 黄(図形)
29.1.3.1 緑(文字)
29.1.3.2 緑(図形)
29.1.6.3 グレー(文字)
29.1.6.4 グレー(図形)
29.1.8.1 黒(文字)
29.1.8.2 黒(図形)
29.1.11 一つの色が顕著なもの
29.1.14 四つの色

登録第6008748号(参照:特許情報プラットフォーム)

適切な図形等分類のコードを見定めた後、ロゴを使用する事業(商品やサービスの範囲)を踏まえて、適切な区分範囲の中から、似ているロゴが先に登録されていないか、1件1件目視でチェックしていきます。

なお、Cotobox(https://cotobox.com/)やToreru(https://search.toreru.jp/)など、ロゴの画像をアップするだけで、AI(人工知能)を利用し自動検索ができるサービスもあります。しかし、AIの検索結果の精度はまだまだ高くないため、参考程度にみるようにしてください。

3.ロゴが似ているか?

(1)オリンピックのロゴを例に

ロゴを、1件1件目視でチェックしていく中で、似ているロゴがあった場合、商標登録が可能かを検討することになります。

オリンピックロゴのケースを例に、ロゴが似ているかを検討してみましょう。

テレ朝news:https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000056793.html

まず、ロゴの全体を比較すればよいのか、ロゴを部分的に比較する必要があるのかを判断します。

左手のリエージュ劇場のロゴ(以下「リエージュロゴ」)は、上段のシンボルマーク部分と、下段の「THEATRE/DE LIEGE」のロゴタイプの部分から構成されています。

右手の東京オリンピックのロゴ(以下「オリンピックロゴ」)は、上段のシンボルマーク部分、中段の「TOKYO 2020」のロゴタイプの部分、下段の五輪シンボルマークの部分から構成されています。

このようなロゴの構成の場合、特許庁の審査官は、全体の比較に加えて、リエージュロゴを上段と下段の要素に分け、オリンピックロゴを上段と中段と下段の要素に分け、各要素が似ているかを審査されます。

そのため、今回のケースでは、ロゴの全体を比較するだけでなく、各ロゴの上段シンボルマーク部分が似ているかを比較することが重要です。

(2)ロゴのコンセプトを確認

次に、比較すべきロゴが定まった後、各ロゴがどのようなコンセプトでデザインされたのかを確認します。

人がデザインするロゴには、元になるモチーフやコンセプトがあるはずです。

ロゴは、取引先や消費者に対し、商品やサービスを訴求するブランドや目印として機能させるものであるため、商品やサービスと結びつく何らかのメッセージや意図がロゴのデザインに込められていることが多いからです。

ロゴがどのようなコンセプトのデザインであるかを捉えることにより、ロゴが似ているかどうかに大きく影響します。弁理士に相談するときには、実際のロゴを全て見せるだけでなく、そのロゴのモチーフやコンセプトの情報もできるだけ伝えることが重要です。

リエージュロゴとオリンピックロゴについて、そのモチーフやコンセプトを踏まえた場合、デザインの基本的な構成が異なることを主な理由にして、商標の専門家の多くは似ていないと判断するでしょう。

具体的には、オリンピックロゴは、「T」(TokyoのT)と「円」(日の丸)の組み合わせからなります。一方、リエージュロゴは、「T」(THEATREのT)と「L」(LIEGEのL)の組み合わせからなります。そのため、デザインの基本的な構成が異なります。

両者は、ともに欧文字の「T」をモチーフにするなど、似たデザイン要素があるとも思われます。しかし、色彩、Tのデザイン、円の背景図形など相違するデザイン要素も多いこと、オリンピックロゴは、全体として正方形を9分割し、多様な文字やパターンに展開可能なデザインであること、1964年の東京五輪をイメージさせる日の丸の赤い円は、軽視されるデザイン要素ではないことから、ともにシンプルなデザインの構成要素の中では、オリンピックロゴとリエージュロゴの違いは小さくないと評価されるべきです。

したがって、ロゴの構成中に似た要素が一部含まれたとしても、基本的なデザイン構成の違い、デザインコンセプトの違い、似ていない要素の存在等から、似た要素がロゴ全体に及ぼす影響は大きくないと評価されるべきであり、リエージュロゴとオリンピックロゴは似ていないと判断されることになります。

(聞文読報「8月5日 佐野研二郎(デザイナー/アートディレクター) 東京2020エンブレム デザイン盗用問題に関する記者会見・質疑応答」参照https://bunbuntokuhoh.hateblo.jp/entry/2015/08/26/152006

(3)ロゴの著作権

商標登録と著作権は、似て非なる制度です。

ロゴの商標登録をすれば、ロゴの著作権も取得できるわけではありません。自分で制作をしていない著作物の著作権を取得するには、契約で著作権を譲渡してもらう約束をする必要があります。

ロゴの制作を外部のデザイナーに委託する場合、ロゴ(シンボルマーク、ロゴマーク)の著作権を譲渡してもらうように注意してください。

デザイナーから著作権を譲渡してもらわずに、商標登録をしても、デザイナーの著作権を侵害(商標権と著作権の抵触)し、登録商標が使用できなくなるリスクがあるためです。

なお、文字をベースにしたロゴタイプの場合、文字は万人の共有財産であるとの観点から、著作権は発生しないと過去の裁判例で判断されています。

 

◆文字のデザイン書体に関する裁判例

POPEYE事件(東京地判平成2年2月19日、昭和59年(ワ)第10103号)

Asahi事件(東京高判平成8年1月25日、平成6年(ネ)第1470号〉)

住友建機株式会社事件(東京地判平成12年9月28日、平成12年(ワ)第2415号)

GEKI撃事件(東京地判平成16年12月15日、平成16年(ワ)第3173号)

かつ~ん事件(東京地判平成28年4月18日、平成25年(ワ)第20031号)

ロゴタイプの場合は、著作権を気にせずに済みますが、ロゴの書体について外部のサービスを利用して制作する場合、サービスの利用規約に違反しないか(利用制限がないか)を確認するようにしてください。


おわりに

今回は、ロゴの商標登録について、弁理士の視点からどのように考えるかを解説しました。

弁理士に相談するときには、以下のポイントを意識するようにしてみてください。

 

・ロゴのデザインやバリエーションを全て見せて、ロゴタイプ・シンボルマーク・ロゴマークの違いを明確に示し、ロゴの対象についての認識を一致させること

・ロゴのモチーフやコンセプトなどの情報もできるだけ伝えること

・ロゴの制作を外部のデザイナーに委託する場合、ロゴ(シンボルマーク・ロゴマーク)の著作権を譲渡してもらうこと

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    執筆者
    弁理士 五味 和泰
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