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防護標章とは?

防護標章とは

防護標章登録制度(以下、防護標章)は、著名な商標について、通常の商標登録よりも権利保護の範囲を広げるための制度です。ここでいう「著名」とは、一般よりも広く認識された商標という理解でよいでしょう。

通常の商標登録は、商標を使用する商品・役務(サービス)を指定して登録されます。
その権利範囲は、指定商品・指定役務、及びそれと類似する商品・役務までとなっており、非類似の商品・役務には、商標権の効力は及びません。

しかし、著名な商標は、その商標が使用されている商品・役務とは全く違う商品・役務であっても、同じ商標権者による商品・役務であると消費者に誤解を与える恐れがあります。

具体例を紹介しましょう。
マヨネーズなどの商品で有名なキユーピーは、調味料をはじめいくつもの商品を商標登録しています。(※1)

しかし、もし無関係の企業が建築一式工事のサービスについて「キユーピー」という名前を使用した場合、それを目にした消費者は「マヨネーズで有名なキユーピーが、建築一式工事のサービスも提供している」と誤解する可能性があります。

このように、商品・役務の出所(提供元)について区別がつかず、誤って認識されてしまうことを「出所の混同」と言います。

そこで、著名な登録商標に関しては、その指定商品・指定役務とは全く異なる商品・役務であっても、使用されることで出所の混同が生じる可能性がある場合に、防護標章登録による保護が認められるようになっています。

先ほど例に挙げたキユーピーについても、実際に建築一式工事などのサービスを指定した防護標章登録があります。(※2)

※1・・・商標登録第832283号など
※2・・・商標登録第832283号防護標章登録第24号

 

防護標章登録の効果としては、防護標章登録された標章を、他人がその指定商品・指定役務に対して使用した場合、商標権の侵害と見なされ、また他人が商標出願した場合には、登録が認められません。

わざわざ防護標章登録制度で保護しなくても通常の商標登録制度で十分なのでは? という疑問があるかもしれません。通常の商標登録では、指定商品・指定役務について登録商標を使用していない場合、不使用取消審判によって登録が取り消される恐れがあります。その点、防護標章登録では不使用取消審判の心配がありません。

また、防護標章は「商標」ではなく「標章」と表記します。「標章」とは文字や図形、マークなどのことです。

これに対し、「商標」は商品・役務について使用する「標章」を指します。

防護標章は、あくまで実際の使用は想定していない商品・役務についての登録なので、「商標」とは呼ばないのです。

 

防護標章の登録要件

防護標章登録には、下記の要件(1)~(4)を満たすことが必要です。

(1)自社の登録商標と同じ標章であること

防護標章登録の出願書類には、自社の商標登録の登録番号を記載します。そして、防護標章登録を受けようとする標章は、その商標登録に係る商標と同一であることが必要です。

 

(2)その登録商標が、その指定商品・指定役務について著名であること

著名とは「需要者の間に広く認識されている」ことを指し(※3)、その登録商標が、商標権者の出所の表示として指定商品・指定役務の需要者の間で「全国的」に認識されているものをいいます。
登録商標の使用状況や広告宣伝の普及度などを考慮し、総合的に判断されます。

なお、著名な商標ではないと判断され防護標章登録が認められなかった事例として、ストッキングなどの商品で知られている登録商標「Tuché」事件(※4)や、ファッションブランドとして知られている登録商標「JOURNAL STANDARD」事件(※5)が挙げられます。

※3・・・商標法64条
※4・・・「Tuché」事件 知財高裁令和2年9月2日判決、令和元年(行ケ)第10166号
※5・・・「JOURNAL STANDARD」事件 知財高裁平成21年2月25日判決、平成21(行ケ)10189号

「Tuché」事件では、その登録商標を使用した商品が全国的に継続して販売されていることなどから相当数の需要者に認識されていることが認められるものの、その市場シェアや広告宣伝の規模などを考慮すると、大半の需要者が認識しているとまでは言えないとして、著名性が否定されています。

「JOURNAL STANDARD」事件では、その登録商標を使用した店舗が日本各地に存在していること、その登録商標を含む記事が代表的なファッション雑誌に多数掲載されていることなどから、需要者の間である程度の認知度があることは認められるものの、出店エリアの偏りや市場全体に対する売上高の割合などから、著名性が否定されています。

 

(3)防護標章登録で指定する商品役務が、登録商標の指定商品・役務とは非類似であること

登録商標の指定商品・指定役務と、これに類似する商品・役務については、登録商標の権利で保護されているため、あくまで防護標章登録の対象となるのは、登録商標の指定商品・役務とは非類似の商品・役務とされています。

 

(4)他人が登録商標を使用することにより、出所の混同が生じる恐れがあること

防護標章登録で指定する商品役務について、他人がその登録商標を使用した場合、商品役務の出所(提供元)が商標権者またはその関係者である、と消費者に誤認される(出所の混同が生じる)恐れがあることが必要です。

 

防護標章登録の出願方法

出願手続

防護標章登録出願の願書の作成方法に従って願書を作成し、特許庁に提出します。

通常の商標登録出願と大きく異なる記載項目は、「防護標章登録出願に係る商標登録の登録番号」を記載する点です。また、特許庁へ納付する印紙代も通常の商標登録出願と比べて約2倍(※6)です。

※6・・・2022年11月時点(出典:産業財産権関係料金一覧

 

登録手続

特許庁の審査の結果、登録査定が届いたら30日以内に登録料の納付手続を行います。

 

防護標章登録の注意点

防護標章登録の更新には、更新登録出願が必要

防護標章登録の権利存続期間は、設定登録の日から10年です。

権利存続期間を更新したい場合には、存続期間の満了前6か月から満了の日までの間に、防護標章登録に基づく権利存続期間の更新登録出願を行う必要があります。

通常の商標登録の更新と異なり、防護標章登録では、更新登録出願において再度、防護標章登録の要件を満たすかどうかが審査されます。
防護標章登録の要件を満たすと判断された場合には権利が更新されますが、満たさないと判断された場合には権利が消滅します。

 

防護標章登録は元の登録商標に付随するため、登録商標の状況に応じて変化する

防護標章登録は、元の登録商標の権利保護を拡張することを目的とした制度であるため、元の登録商標の権利が消滅したとき、または分割されたときは、防護標章登録の権利も消滅します。

また、元の登録商標が移転したときは、これに伴って防護標章登録の権利も移転します。

 

防護標章登録の権利範囲は、同一の範囲に限定される

通常の商標登録と異なり、防護標章登録の効力は類似の商品・役務には及ばず、その権利保護の範囲は同一の範囲に限定されます。

そのため防護標章登録はメリットが小さいのでは、という捉え方もありますが、防護標章登録が認められるということは、その登録商標が著名であることの証明にもなるのです。

商標法や不正競争防止法では、商標の著名性が要件となっている条項があり、審査・審判・裁判において、その立証が必要となるケースがあります。防護標章登録されていれば、その商標が著名であることの裏付けとなり、有利な効果を期待できます。

 

さいごに

防護標章登録は現在3400件ほどであり、そこまで多くはないため馴染みのない方も多いかもしれませんが、この記事が防護標章の理解にお役立ていただければ幸いです。

 

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    執筆者
    弁理士 松下智子
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