◇目次
1.インターネット上の模倣品・海賊版問題に関する相談・情報提供件数の統計
インターネットの普及に伴い、日本国内の模倣品販売形式は、市場でのオフライン販売から、インターネット上のオンライン販売に移っています。政府模倣品・海賊版対策総合窓口では、模倣品や海賊版についての相談を受け付けていますが、この窓口が発表している「模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告」によれば、2019年1月~12月に受け付けた模倣品・海賊版に関する相談や情報提供のうち、インターネット取引に関する相談・情報提供は全体の81.6%を占めているとのことです。
相談内容としては、通販サイトやオークションサイトに関する相談、著作権侵害コンテンツの違法アップロードに関する情報提供、SNS、フリマアプリ内での模倣品販売に関する相談など多岐にわたっています。
この統計から、模倣品・海賊版問題の多くは、インターネットに関連するものであるといえます。
2.商標権侵害事犯・著作権侵害事犯の検挙状況
次に、商標権侵害・著作権侵害の事件のうち、インターネットに関連するものがどの程度あるのかを見ていきます。その前提として、まず商標法と著作権法の刑事罰についての条文を確認します。
商標権侵害を行った人には、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金が課されます。また、懲役刑と罰金刑の両方が課されることもありえます(商標法78条)。著作権侵害を行った人には、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金が課されます。また、その両方が課されることもありえます(著作権法119条1項)。
では、次に警察庁のデータを見てみます。警察庁「令和元年における生活経済事犯の検挙状況等について」(2020.3)によれば、以下の表のとおり、令和元年には、316事件の商標権侵害事犯を検挙し、このうち、インターネット利用事犯が占める割合は80.7%になっています。
(画像)警察庁「令和元年における生活経済事犯の検挙状況等について」
また、著作権侵害事犯について見てみると、141事件の検挙がなされ、このうち、インターネット利用事犯が占める割合は87.2%となっています。
(画像)警察庁「令和元年における生活経済事犯の検挙状況等について」
このように、商標権侵害事犯・著作権侵害事犯いずれも、インターネットを利用している事件が多くを占めています。
3.インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会(CIPP)の効果検証
以上のとおり、インターネット上で多くの商標権侵害物品・著作権侵害物品が販売されていますが、プラットフォーマーもそれらの侵害物品の削除を積極的に行っています。
インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会(CIPP)という、権利者とプラットフォーマー両者が連携して模倣品・海賊版対策を行う団体があります。CIPPでは、インターネットオークション及びインターネットフリーマーケット等のC to Cマーケットに、どの程度の侵害品が存在するか調査するための効果検証を行っています。具体的には、任意の1日を選び、その1日のプラットフォーマーの自主削除件数、権利者からの削除依頼件数等を計測しています。CIPPが発行している「2018年度インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会報告書」によれば、2018年は、CIPP正会員8社合わせて、任意の1日において、199万6916件の削除をプラットフォーマー自らが行っていることが分かります。また、権利者からの削除依頼件数は、CIPP正会員のうち7社の合計値で、任意の1日において15万2748件となっています。
このように、多くの模倣品・海賊版がインターネット上で出品されていますが、プラットフォーマーが対策を講じ、かなりの数の模倣品・海賊版が削除されています。これらのことから、インターネット上の模倣品・海賊版対策を行うにあたっては、プラットフォーマーと協力することが不可欠です。そのために、まずは、プラットフォーマー各社の模倣品・海賊版対策や削除申請の方法を理解することが肝要です。
4.まとめ
各種統計資料等から、模倣品・海賊版被害のうち、インターネット上が占める割合が増加していることは明らかであり、その対策はますます重要性を増しています。インターネット上で模倣品・海賊版の販売がされている場合、登録した商標等を有効活用し、早期に対策を取られることをお勧めします。