「ゆるキャラ」※1ときくと何を思い浮かべるでしょうか?地域おこしのご当地キャラクター、企業や学校などののイメージアップに貢献するキャラクター等、たくさんのゆるキャラが世の中にあふれている中、これらキャラクターを商標登録する必要性とは何なのでしょうか?今回は、このキャラクターの商標登録について検討してみます。
※1:「ゆるキャラ」は有限会社みうらじゅん事務所、株式会社扶桑社の登録商標です。
◇目次
1.ゆるキャラの商標登録の必要性
ゆるキャラと聞くと、そのかわいらしい、親しみやすさを与える見た目を思い浮かべることでしょう。そして、キャラクターの見た目は、著作権で保護できるのでは?商標登録までする必要はないのではないか?と考える方もいるのではないでしょうか?
確かに、キャラクターの見た目は著作権でも保護されますが、著作権は登録などを必要ととしない権利です。創作時点で自然に発生する権利のため、どちらが先に創作したのか争いになった場合、証明する客観的な証拠が必要になるなど、権利行使に手間がかかります。
一方、商標登録をしておけば、権利者、権利発生日等、特許庁にて明確に確認可能です。また、商標権は10年毎に更新が可能であるため、権利を半永久的に存続することができます。さらに、キャラクターの名前は、著作権では保護されません。ゆるキャラを保護したい場合は、商標登録にて保護するメリットは大きいといえます。もしも、デメリットがあるとすれば、商標登録や更新には費用がかかるため、そこが著作権と比べたデメリットと言えるでしょうか。
2.ゆるキャラの商標登録の手順と区分について
では、ゆるキャラを商標登録する際に、キャラクターの見た目を登録すべきなのか、名前を登録するべきなのか、どちらを優先するべきなのでしょうか?
権利の側面から考えた場合、キャラクターの見た目とキャラクターの名前を分けて登録することで、より広く手厚い保護を得られる商標権を取得できると考えます。したがって、それぞれ個別に取得することをお勧めしますが、これからどの程度盛り上がるか分からないキャラクターにそこまでの予算が下りない、ということもあるでしょう。
そのような場合は、キャラクターと名前をまとめて1件で登録することも可能です。まずは可能な範囲で商標登録をしておきたいということであれば、キャラクターと名前をまとめて1件でをまとめて登録すればばよいでしょう。ただし、個々で権利を取得した場合よりも権利範囲が制限されますので、後々、キャラクターの盛り上がり具合を見て、取得範囲を追加することも検討するとよいでしょう。
また、キャラクターは、立っている状態、座っている状態、はたまた笑っていたり泣いているなど、様々な動きや表情があり、どれを登録ししたらよいのか迷うところかと思います。そのようなときは、まずは一番、露出度が多いキャラクターの見た目を登録することがよいでしょう。
さらに、商標等登録時には、権利が及ぶ範囲(おもちゃ、お菓子、アクセサリー、広告など)を定めた「区分」を指定する必要があります。区分については、他者に無断で使用されたくないという防御的な観点から選択される方も多くいらっしゃいますが、将来的に企業にライセンスする可能性も考慮した観点で区分を選択することも必要です。専門家と相談の上、適切な区分を選択しましょう。
3.商標登録されたゆるキャラは他者のビジネスでも利用可能か?
それでは、他者のゆるキャラをビジネスで使用したいと考えた場合は、どうすればいいでしょうか?まずは、そのゆるキャラの権利をもつ地方自治体や企業のホームページを確認しましょう。
例えば、熊本県のご当地ゆるキャラとして有名な「くまモン」の場合は、利用申請の規定や申請書が整備されています。また、県のPR等に使用する場合など、規定に沿っていれば当面の間、基本的には使用料が無料になるようです。このように地方自治体の場合、地域の活性化等につながる使用であれば使用料が無料になるゆるキャラもあります。
一方、企業のゆるキャラの場合、使用料が発生することも当然想定されます。例えば、第一印刷株式会社の登録商標である「バリィさん」のイラストや画像などは、使用料が発生するケースもあるようです。
地方自治体や企業によって利用規定や使用料の有無について定めがありますので、他者のゆるキャラを使用したい場合、事前に利用条件等、確認するようにしましょう。
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